お椀の中身

女、アラサー、IT系。

八丈島ひとり旅2

40分の山道をてくてく歩いてたどりついたのは、

島寿司の人気店。

 

 

その名も・・・

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いい汗をかいて、ビールが飲みたい気分。

金曜日の早い時間帯だからか、割と空いている。

 

 

島寿司と、生ビール。

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うまいに決まってる。

(勢い余って写真撮る前に下半分食べちゃった)

いい感じに熟した、島でとれたネタ。

キツネ(ハガツオ)の海苔巻き、キンメダイ、バチマグロ・・・

 

中でも気に入ったのはバショウイカ(アオリイカ)。

甘くてまったりとした噛みごたえがあって、うまーい。

 

あと、トビウオのすり身と、島でとれた岩のりが入ったお汁がおいしい。

海苔がしっかりしていて、味もしっかりしていて、おいしくて2杯も食べた。

 

ちょうど島欲とともにウニ欲も高まっていたところだったので

ウニを追加注文してフィニッシュ。

 

ウニといえばシュノーケリングで棘が白いウニをみたんですーという話をしたら大将とウニトークで盛り上がる。

ずっと後ろ向いて黙々と新聞読んでた地元のおじさんも振り返って「あのウニは甘くておいしいんだよ、身がトロトロしてるから寿司には向かないんだけど」なんて教えてくれる。

ガンガゼも食べれるらしい。剥くのが大変だけど。

 

大将「お嬢さんこのガイドブックあげる、うちも載ってんだけど」

お客さん「お、かわいい女の子にしかあげないんだよ」

私「わーい、ありがとうございますー」

などなどひとしきり大将と他のお客さんとお話をして、

かわいいお嬢さん扱いされてウキウキ気分になったところに呼んでいたタクシーが来たので、

ごちそうさまでしたーとお会計して帰路へ。

 

 

タクシーの運転手さんは若い女性だった。

最近島に移住してきて、タクシーはじめたのもついこのあいだという。

 

田舎はいいですよねー。人が少なくて居心地がよくて。

私、虫がダメなんで虫だけなければ最高。

ははは、そういえばさっきすごく大きいカタツムリ見ましたよ!

ヤダー

 

なんて話をしている間に ホテル到着。

 

玄関口に入るときにキノコの話をする。

お姉さんもまだ光るところを見たことがないらしい。

通りすがりにヤシの木をみてみると・・・・

 

ん!?

 

「あ!!!光ってたかも!!!一緒に見に行きましょうよ!」

 

「一旦車寄でメーター止めて、バックしましょうか」

ロータリーをぐるっとまわって玄関口に戻る。

 

車を降りてヤシの木の近くまで見に行ってみると・・・・

 

 

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めっちゃ光っとるやんけ!!!!

想像した以上に明るく光るキノコ。感動。

 

見れないと思ってたのに、こんな近くに生えてくれているなんて・・・

ラッキーすぎる!!!

 

「やっぱり光ってる!すごい!わー!」

運転席に座ってるお姉さんを手招きして誘う。

「おねえさんも見てみて!!!」

 

 

お姉さん、降りてきて見る。そして一言。

 

 

 

 

 

「うわぁ、・・・・なんか虫みたい」

 

 

 

リアクション薄っ!!笑

むしろちょっと嫌悪感出てる!

なんかテンション高めに誘っちゃってスミマセン・・・

 

 

そそくさと運転席へもどるお姉さんになんとも言えない気持ちで

ありがとうございましたーと別れを告げる。

 

 

 

気を取り直してひとりキノコ観察会開始。

下からのアングル。(興奮してるしシャッタースピード遅いしで何回撮ってもブレた)

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すげー、ほんとにキノコが光ってるよー

なんのために、どうやって光るんだろう・・・

 

傘のところをちょっと触ってみたら、

ねとってした。

 

ひとしきり観察して写真を撮って、興奮冷めやらぬままロビーに戻る。

 

 

ロビーでひとり、新聞を読んでたおばちゃんに、

「光るキノコ、見ました!?」と聞く。

見てませんけど、と言うおばちゃんを

「今そこに生えてたんです!見に行きませんか?」と懲りずに誘う。

 

おばちゃん、はぁ、と半信半疑な感じながらも、ホテルのスリッパを履いて一緒に外にでる。

車寄を抜けてずんずん先に進んでいると、後ろで

どこまでいくんですかーと不安げ。

 

 

ほら、そのヤシの木に、と見せる。

 

 

と、おばちゃん、

「・・・・えっどこ・・・え!?すごい、ほんとだ、キノコだ、すごい光ってる!!」

一転、少女のようなテンションに。

 

「貴重なものを見せてもらった!ありがとうございます!!お父さんにも見せてあげよう!」とロビーへ戻る。

 

フロントのお兄さんにも伝えたら

「お、運がいいですねぇ。光るキノコの寿命は3日なんですよ。1日目が一番光るんです」と教えてくれた。

 

わー、見れて嬉しいなぁ。

おばちゃん、自室に入っていきながら「お父さん、光るキノコみたよ!!」と声をかけている。

今度は喜んでもらえてよかった。

 

 

 

部屋に戻ったあと、大浴場へ。 

それがまた、誰もいない、貸し切り状態。

鼻歌歌い放題。

 

 

湯船であったまりながら、ほくほく気分で、

今日はほんとラッキーな1日だなぁ、と浸る。

 

 

1日で島メーター振り切れるくらい、チャージできた。

やっぱり、島は、いいなぁ。

 

 

八丈島ひとり旅1

コンクリートジャングルの中では、「島欲」がどんどん溜まる。

 

連日深夜帰りの締め切り週を超えて、

あー、そろそろ島をチャージせねば。

さっと行けて、南国感のある島。よし、八丈島いこ。

 

ということで、先週急遽決めて、いつものノープランで、八丈島なう。

 

ここ最近ひとり旅ってほとんど無かったからちょっとドキドキ。

 

ーー(こっから愚痴が長いので読みたくないときはワープ)ーー

 

前日の夜中、よく見たら旅行代理店から航空チケットの予約完了メールが来てないことに気づく。その前のメールは予約受付メールで、予約完了メールに記載のURLからクレジット決済を21日までに行ってくださいと書いてある。でもその完了メールが来てない。

こんなにドキワクしてるのに航空券取れてなかったらどうしよう。

眠れぬ夜を過ごし、営業開始時刻10時ちょうどに電話。

メールが届いてない旨を伝えると、第一声が「なんで今まで連絡しなかったんですか?もう24日ですけど」で、萎える。聞くと、21日を過ぎたので航空券は自動キャンセルされてるらしい。確かに、完了メール届かなかったら連絡くださいとは書いてあったよ?でもすでに届いてる予約完了メールと同じアドレスだし携帯宛なので迷惑メールに振り分けられてる可能性等極めて低い。なのに向こうは非を認めようともしない。そらメール使ってたらシステム障害やらメールサーバの障害やらで届かないこともあるでしょう、でもそのシステム使って商売してるのあんたやで!?自動キャンセルされる旨なんて予約受付メールに書いてなかったやん?わてのドキワクどうしてくれはるん?と大阪の営業所向けに大阪弁で詰りたかったが、そんな能力はなくただ「分かりました、次からは使わないようにします」とだけ伝えたらガチャ切りされる。

そのあとANAの公式ページから予約したらそっちの方が手数料かからないだけ安いことが判明。席も空いてるし、で速攻予約。初めからこっちで予約しとくべきだった…

というか格安航空券を謳っておきながら正規料金と同じで手数料上乗せって、それでそのしょぼい客対応って、どんな商売してんねん!!!!!

次回からはちゃんと正規料金確認してから旅行会社探そう、と学んだのであった。

ーー(ワープ先)ーー

 

そんなしょっぱい朝を駆け抜けて、羽田から八丈島へ。

 

ANAの機内誌が結構好きでいつも割と念入りに読む。

今月は魚のサワラについての紀行文が乗ってて、うまそーと思っていたら、

隣のおっさんサラリーマン二人組もちょうどその記事を見ている。

おっさんA「おー、サワラか、うまいよなぁ」

おっさんB「うまいっすよねぇ。でもあれです。僕、サワラ見るといつも鈴木紗理奈さんが思い浮かぶっす」

おっさんA「・・・確かにちょっと似てんな」

サワラの写真二度見した。確かにちょっと。

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降り立った八丈島は東京よりすこーしだけあったかくて湿り気がある空気。

うわぁ〜島に来た〜とテンションが上がった。

先週から逐一チェックしてた天気予報は、滞在中ずっと曇り時々雨。

 

唯一予定をあらかじめ決めてたシュノーケリングは、上陸後すぐ。

ガイドのお兄さんが空港まで迎えに来てくれた。

天気は曇り。まだ雨は降ってない。チャンス!

ウェットスーツに着替えて海まで行くと、少し晴れ間も出てきた。チャーンス!

 

フィンをつけて、海中散策。

雨はまだ沢山は降ってないので、海水の透明度は高く、先まで見渡せる。

しかもちょうど潮が引いている時間帯で、綺麗なサンゴ礁の色合いが明るく見える。

めくるめくお魚の世界。

みるみる体内の島メーターがチャージされていく。

シュノーケルくわえながら鼻歌。

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でっかいボラに始まり、

いろんな種類のチョウチョウウオ

カラフルなベラ、大きいハリセンボン、エイ、

イソギンチャクから見え隠れするクマノミ

青が綺麗なルリスズメダイ、

細長いダツの群れ…

うぉーー、嬉しい。

魚が苔を食べるときの「ザッザッ」という小さな音が聞こえてくる。嬉しい。

 

はぁ〜楽しいな〜と浸っていると、

お兄さん「向こうに大きいカメがいる」

 

見ると、

 

 

 

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デカっ!!!!!!

 

体長130センチくらいありそうな、大人のアオウミガメ。

小さな魚に体の掃除をしてもらいながら、

ぽけ〜と海中に漂っている。

 

じーっとして見惚れていたら、こっちを向いて、目が合う。

かわいい顔。

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同じぽけーっとしてるやつに同族意識が湧いたのか、

こっちにゆっくり近づいてきて、今にも手が届きそうな距離に。

 

わぁ〜♡と嬉しくなって、いつも猫にするみたいに手を出しておいでおいで〜

としたら、スーッとどこかに行ってしまった。猫か君は、猫なのか。

 

 

 

大満足でシュノーケリングを終える。

狙ってたウミウシは見れなかったけど、それはまた次回のお楽しみということで。

 

シャワーを浴びて車に乗ったところで、空が暗くなってくる。少ししたら、ザーザーぶりに。おー、すごいタイミング。日頃の行いが良いのでしょう。

 

ラッキーは続く。

 

 

ガイドのお兄さんにホテルまで送ってもらっている道中、光るキノコの話に。

 

私「光るキノコっていうのが見たかったんですけど、今時期じゃないんですね・・・」

お兄さん「そうだねー、7月からは観察会とかやってるんだけどねぇ・・・」

私「見たかったなぁ」

お兄さん「たまーに家の周りにも生えてることがあるけどねぇ、今年はまだかなぁ。ヤシの木の上のところのもしゃもしゃしてるところが湿ってて生えやすいらしくて、そこから生えるんだよ」

私「そうなんですねー」

 

ホテル入り口から車寄せに入る途中

お兄さん「ほら、こういうヤシの木に・・・あれ?」

私「今ちいさい白いの、ありましたよね」

お兄さん「バックして見てみよう」

私「やっぱキノコだ」

お兄さん「うん、こういう白いキノコ。光るのは。夜になってみないとわからないけどね」

私「わ〜!暗くなったら見てみますね!ただの白いキノコかもしれないけど!笑」

 

ありがとうございましたーとお兄さんと別れて、

チェックインし、ホテルの部屋へ。

 

 

部屋は広いツインルーム。

なんと角部屋のオーシャンビュー!!!

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わぁー、ラッキー!!

観光協会のお姉さん任せで、特に指定したわけじゃないのに、ツイてるなぁー。

開放感があって海がずーっと見れて、寝そべりながらも潮風を感じられて・・・

幸せすぎる・・・

 

 

ちょっとお部屋で休憩して夜ご飯のお店を調べる。

郷土料理に島寿司というのがあって、おいしそう。

人気のお店まで歩いて40分くらいかかるけど、まだ明るいので歩いていこう。

 

ホテルを出るときにさっきの白キノコをパチリ。

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光りますように。

 

 

お寿司屋さんへの道すがら、島の中の小さな自然を楽しむ。

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鮮やかでみずみずしい色と光と触感で、島を感じる。

 

 

 

フラフラ写真を撮ったり鼻歌歌ったりしながら、

あっという間に

ちょっと変な名前のお寿司屋さんは、もうすぐそこ。

 

 

ーつづくー

 

重版出来!で毎回泣く。

ドラマ「重版出来!」が面白い。

一話にいろんなエピソードが盛り込まれていて飽きない。

主人公の女の子の表情がころころ変わって可愛い。

エピソードの一つ一つが濃くて味わい深い。

 

「いるよな〜こういうやつ」

「あいつに見てほしいな〜」

「こんな風にまっすぐになれたらいいな〜」

素直な感情がほろほろ出てくる。

 

仕事を頑張っている人、夢を追ってる人には

面白いんじゃないかな。

分かりやすい悪者が居ない、だからこそリアル。

 

次も楽しみだな〜

 

 

デンキブラン

今日

おとんが東京に来た。

出張らしい。

 

浅草のホテルに泊まるらしいので

夕方、雷門に集合。

 

私はおとといまで締め切りに追われ連日深夜帰り。

昨日もその残対応に追われ、疲れていた。

なので今日は代休。

 

こないだお母さんが電話口で、父の上京&私が会うことになってることについて

小声で「ちょっと嫌でしょ?笑 おじさんの相手しないといけないのなんて嫌だよね?」と言ってきたけど、「まぁいいよ、たまにしかないんだし」と答えたけれども、

内心全然嫌じゃなく、ちょっとだけ楽しみにしてた。

父と1対1で会うのはなかなかないから。前から仕事の話とか、ちゃんと聞いてみたかった。

 

工事中の雷門の前に立っていたワイシャツ姿のおとんは

また髪がちょっと薄くなった感じだった。

よっ、と右手を挙げて近づいたら、

おっ、という顔をして「雷門は工事をしているよ」と見たら分かることを鹿児島弁のイントネーションで言った。

 

せっかく浅草に来たので、明後日、友達と着物遊びをするのでその小物が買いたかった。

「ちょっと買いたいものがあるから見ていい?」と言って

仲見世通りを歩いて目当ての呉服屋を物色した。おとんは外で待ってた。

帯やら草履やら小物を選んだら結構な金額になった。

まー、ずっと着れるからいいかなと思ってえいや、と払っていたら

ちょうどおとんが戻ってきて、私が払うのを見ていた。

あちゃー、見られちゃったな、と思った。

店を出て、「ちょっと高かったな」と言ったら

「すごいね、そんな金額をポンと出してしまうんだね」と父は言った。

 

古い商店街を歩きながら「父の日のプレゼント、何がいい?選んでよ」

と言うと、カバン屋さんの店先で「これにする」と安売りのバッグを選んだ。

さっき呉服屋で払った金額の10分の1以下のバッグ。

「え、バッグなんかいつも持ってないじゃん、どこに持っていくの」

天文館とか。最近はバッグを持ってるんだよ」

「ふーん、もうちょっと良いのにしたらい…」言いかけて思い出した、前に昇進祝いに私があげたちょっと良いネクタイを、もったいなくて使えずにしまってあるという母が言ってた話。

「まぁ良いのだと使えなくなるからいっか、これで」

「これならペットボトルも入りそうだよね、明日の日光もこれで行こう」

レジで私がお金を払って、バッグが入った袋をおとんに渡すと

「ありがとう、お母さんにまなちゃんに貰ったって教えてあげよっと」とすごく嬉しそうにしていた。

 

 ちょっと歩くともんじゃ焼き屋があったのでそこで食べることにした。

 

メニューに写真が載ってた「フローズン生」を「ほーう」という顔で見て店員さんにこれください、と言うから「私も」と言った。

「普通のと、黒ビールとありますが?」私「普t」父「一つずつください」。

ビールが来て、私は普通のが良かったので黒を渡したら、案の定、一口飲んでから「これ美味しいよ飲んでみてん」と渡してきて回し飲みを余儀なくされた。

 

明太子もちチーズもんじゃを焼きながら、「なにしに東京来たの?」と聞くと仕事の話をちょこちょこ教えてくれた。

小さいコテで食べるもんじゃは思いの外美味しくてビールが進んだ。

「お好み焼きとも違って不思議な味だね」とは言うが父もご満悦。「焼くのが上手だったから美味しい」

 

お腹が落ち着いてきたらおとんが「デザートでも食べる?」と言った。

メニューを取ろうとしたら「ここにはないんじゃない?」と言ってきたのでああ2件目に行きたいのか、と分かった。

神谷バーに行ってみる?」というと嬉しそうに、「おぅ、あったよね来るときに。デンキブランって言うのがあるんだってさ」と乗ってきた。

デンキブラン?なにそれ」

もんじゃのお会計はおとんが払った。

伝票をなんども確認するおとんに、後ろから「そんなもんだよ」と声をかけた。

世の中的には「安定」と言われる仕事に就いて、年齢相応な立派な役職にもあるのにもかかわらず、おとんは貧乏性だ。

 

 『大正時代に流行した文化住宅・文化包丁などの「文化…」、あるいはインターネットの普及につれて流行した「サイバー…」や「e-…」などと同様に、その頃は最新のものに冠する名称として「電気…」が流行しており、それにブランデーの「ブラン」を合わせたのが名前の由来である。』とWikipediaには書いてあった。太宰治の「人間失格」にも出てくるカクテルのことらしい。ピエール瀧の顔が一瞬浮かんだ自分の乏しい思考回路。

 

ビールをチェイサーにしてブランデーを飲む、というすごい飲み方を店が推していたので生中1つとデンキブラン2つ、おつまみを2皿をレジで注文。すると、食券が渡された。

神谷バーは混み合っていて活気があった。

電車の広告で見たときはこ洒落た薄暗いバーをイメージしたけど全然違って、テーブル席がたくさん並ぶ、わいわいしたビアホール、という感じだった。

 

「なに?元々知ってたの?デンキブランって」

「うん、なんで知ってるんだろう、漫画で読んだかな」

 

アルコール度数30%に乗せられて、お互い饒舌になる。

父は中学校の校長。

「先生になったばっかりの頃は、やりたくないことは無理してさせる必要ない、

音楽も長距離走も数学も、やりたいやつがちゃんとやればいい、って思ってたけど、

今はそうじゃない、嫌なことでも無理にでも、やらされてやってみて、好きになったり得意だって気付いたりするんだから、機会を与えないとダメだ、って思うようになったよ」

「昔のそろばんみたいに、プログラミングをさせた方がいいよ。世の中の仕組みがわかるようになる。発達段階に合わせた学習ツールもあるんだよ」

「うちの理科の先生にやらせてみるかな」・・・

この歳になっても周りの意見を取り入れて、教育をより良くしていきたいという思いに触れて、

頼もしく、ちょっと誇らしく思った。

 

自分の仕事の話もした。

数人の部下がいること、採用の仕事も関わっていること、自分の会社のビジネスモデルと存在価値。

酒も手伝っておとんは興奮して、

「ほーぅ、すごいねぇ。そんなにすごい仕事をしてるんだねぇ。初めて知った。お見それしました」と言った。

 

高校生の頃、進路志望でより偏差値の高い県外の大学に行きたいと言うと怒ったおとん。上を目指すだけなのに、なぜそんなに怒られるのかが理解できなかった。

 

その数日後に、「あれは自分のエゴだった。自分の道は自分で決めなさい」と頭を下げて謝ってきたおとん。

 

それから私は、福岡に出て、東京に出て。

ぼーっとして、中・高と特に将来やりたいことも分からず、

「将来の夢」を書かないといけないときにはいつも、母が「これが良いよ」と勧める「安定できる仕事」を何も考えずに書いてた私が。

 

あの日から、ちょっとずつ自分の頭で考えるようになって、行動を決めるようになって。

社会人になって仕事をする中でさらにアウトプットとフィードバックの機会が増えて思考の幅が広がって。

楽しいことが起きることを待つんじゃなくて、自分から作っていける、自分から楽しみにいける、そんな実感が今あって。

昔はただ流れているものを見てるだけだったドラマや漫画も、その面白さが分かるようになって。「自分はこれが好き」と心から思えるものが分かるようになって。

 仕事は苦しくて辛くて行きたくない、と思うこともあるけれど、それでも前に進もうと思える目標があって環境があって仲間がいて。

 

おとんは「中」にしてはデカい生中のジョッキを片手に「仕事、楽しいか?」と聞いてきた。

「楽しいよ」と答えた。

目が熱くなって、ぼやけたので慌てて下を向いて答えた。本当は目を見てはっきりと答えたかった。

 

すごぅく、心配してくれてるの、今は分かる。

ほんとは近くに居てほしいって、知ってる。

 

 

 

 

 

「親としては、楽しく健康でいてくれるのが、いちばん」

なぜか手を差し出して握手を求められたので、そっと手を添えた。

 

 

 

 

 

「そろそろ行くか」と言って地下鉄に潜る階段の前で、じゃあねと言って解散した。

 

神谷バーでおとんはしきりに、周りを見渡しながら「所ジョージの笑ってこらえてに出てくるハシゴ酒の人はいないのかな、いそうなところだ、いれば良いのに」と言ってた。

 年齢相応な立派な役職にもあるのにもかかわらず、おとんはミーハーだ。

 

でも確かに今日は、スタッフがいてくれたらちょっと良い話ができた気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

たまに書きたくなることを書く

よく、ぐるぐる考える。

たまに、ぐるぐるぐるぐる考える。

 

考えたことを、なにか表現したい、外に吐き出したい。

 

前からちょっと気になってたけど

思いの外簡単に始められたので

 

ブログに書き出してみることにする。

続くか分からないけど。